自己肯定感と身体的自己概念について
下鶴惣真
自己肯定感をRosenberg (1965)の自尊感情尺度(日本語版)を使用し、身体的自己概念を内田(2003)の日本語版身体的自己知覚プロフィール改訂版
(PSPP-J 改訂版)を使用することで、大学生を対象に自己肯定感と身体的自己概念の関係を調査することを目的として調査を行った。蓑内(2010)の身体的自己概念の下位尺度である体型が日本語版身体的自己知覚プロフィール改訂版
(PSPP-J 改訂版)での身体的自己概念の下位尺度である魅力的な体と対応関係にあるという仮説が建てられた。蓑内(2010)の研究では自己肯定感と身体的自己概念の下位尺度である体型で正の相関が見られた。本研究では日本語版身体的自己知覚プロフィール改訂版
(PSPP-J 改訂版)で使われている身体的自己概念の下位尺度である魅力的な体で正の相関が見られるという結果が予測される。
大学生を対象にQualtricsを使用し、回答を求めた。参加者は、フェイスシート、自己肯定感質問紙、身体的自己概念質問紙の順に回答した。参加者の自己肯定感を自尊感情尺度(桜井2000)を用いて測定した。身体的自己概念については日本語版身体的自己知覚プロフィール改訂版
(以下PSPP-J 改訂版)を使用して評価した。集計したデータをR4.2.0で、目的変数を自己肯定感得点、説明変数をスポーツ有能感、魅力的な体、体調管理、身体的強さ、身体的価値として重回帰分析を行った。
スポーツ有能感、体調管理。魅力的な体の3項目は有意ではなかったが、身体的強さと身体的価値の2項目では有意であり、自己肯定感と、身体的強さと身体的価値には正の関係が認められた。近年の大学生たちは魅力的な外見をしていなかったとしても、たくましい体や筋肉質または健康的な体を持つことで、自分自身の身体に価値を感じ、それが自己肯定感に影響を及ぼすことが読み取れた。しかし、魅力的な体と事項肯定感に有意な相関は認められず、その要因として、現代ではSNSの発展によって自分自信の容姿がインターネットを通じて発信することで幅広い人間の目に留まる社会が形成されており、それに加え写真加工技術が発展し、自分自身の容姿をよく見せることのできる加工を施すことが容易になり、自分自身の容姿の良し悪しに関係なく、他人に自分をよく見せることがあたり前になってしまったことが挙げられる。
今後の課題としてはSNSの発展を遂げた現代において、身体的な価値観が時代とともに変化している可能性を調査する必要がある。