スマートフォンの背景色がVDT作業時の身体的負担や作業意欲に及ぼす影響
比佐芽生奈
本研究は、スマートフォンにおけるVDT作業時の背景色の彩度や明度の変化が及ぼす「身体的負担の自覚症状」を調べると同時に、「課題に対する意欲」や「課題の見やすさ」、「背景色の好み」にどのような影響を与えるかについて検討した。課題は、原色の緑、彩度を50%落とした緑、明度を50%落とした緑、原色の赤、彩度を50%落とした赤、明度を50%落とした赤を背景色として実験を行った。
「身体的負担の自覚症状」については、「緑」「赤」のどちらの場合においても「原色」が最も有意に高いことが明らかとなった。「緑」においては、「彩度50%」と「明度50%」の間に有意な差は確認されなかった。「赤」においては、「原色」に次いで「明度50%」が「彩度50%」よりも有意に「身体的負担の自覚症状」が高いことが明らかとなった。
「課題に対する意欲度」については、「緑」「赤」どちらの場合においても「彩度50%」が最も有意に高く、「明度50%」が最も有意に低いことが明らかとなった。また「緑」において、「原色」と「彩度%」、「原色」と「明度50%」の間には有意な差は確認されなかった。「赤」においては、「彩度50%」に次いで「原色」、「明度50%」の順に有意に高いことが確認された。
「課題の見やすさ」については、「緑」「赤」どちらの場合においても「彩度50%」が最も有意に高いことが明らかとなった。また「緑」においては、「原色」と「明度50%」、「彩度50%」と「明度50%」の間では有意な差は確認されなかったが、「赤」の場合においては「彩度50%」に次いで「原色」、「明度50%」の順であることが明らかとなった。
「背景色の好み」については、「緑」「赤」のどちらの場合においても「彩度50%」が最も有意に高いことが明らかとなった。「緑」においては、「原色」と「明度50%」、「彩度50%」と「明度50%」の間では有意な差は確認されなかった。「赤」においては、「原色」と「明度50%」の間では有意な差は確認されなかった。
実験の結果、「身体的負担の自覚症状」が最も少なく、全てのイメージ評価で最も高い評価であった「赤」の「彩度50%」が、VDT作業時の背景色として最も好ましいことが明らかとなった。一方で「緑」「赤」の「原色」と「赤」の「明度50%」は、「身体的負担の自覚症状」や三つのイメージ評価を考慮した際に、VDT作業時の背景色として避けるべきであると考えられる。
今後の課題として、「作業能率」に加えて「課題に対する意欲度」のさらなる調査と作業時間による「課題の見やすさ」の変化、「緑」「赤」以外の色を対象とした色彩の比較及び、机上作業時とVDT作業時の比較を実施する必要があると考える。