川上卒論


映像法を用いた健常者の脊椎損傷者に対する態度変容についての検討

川上朋海

 障害の有無に関わらず、すべての国民が分け隔てなく平等に互いを尊重しあう社会の実現のため、障害者のための法律や制度などが確立されてきた。また、教育の現場においても子どもたちに障害者や障害についての学習の時間が設けられている。しかし、未だに障害者に対する差別や偏見は根強く残っている。健常者の障害者に対する態度やイメージを改善させるための技法のひとつである映像法は映像を媒体として障害者と間接的に接触を持つ方法としてその有効性が示されてきた。しかし、映像法は用いる映像に依存しているため、これまでの障害者に対する研究において映像の統制がされていなかったため、視聴者は障害者に対して異なる知識と認識をもたらせられていた可能性が考えられる。脊髄損傷者は生活していくうえで他人からの介助が必要に場面が多く存在している。そこで健常者の脊髄損傷者に対する態度を改善することが重要であると考えられる。そこで、脊髄損傷に対する説明のみの映像群(以下、説明群)、情緒的反応のみを生起させる映像群(以下、ドキュメント群)、脊髄損傷の説明と情緒的反応を生起させる映像群(以下、混合映像群)と明確に分けることによって映像視聴前後の各群による脊髄損傷に対する態度変容を明らかにすることを目的とした。また、障害者に対する態度研究において、質問紙法などによる顕在的認知指標を測定する方法が主流であったが、偏見や差別など社会的に望ましいと期待されている様な質問に関してはその傾向が顕著に表れる。そこで、偏見や差別など社会的に望ましいと期待されている様な質問に関しても適切に測定でき、その有用性についても検証されている潜在的認知指標であるFUMIEテストを用いて検討した。また、同時に多次元的態度尺度を用いることによって態度変容を多次元的に検討し、障害者に対する潜在的態度の性別による違いを検討した。その結果、説明映像では潜在的態度を改善させることはできないが、顕在的態度を改善させることができることが明らかとなった。ドキュメント映像では潜在的態度、顕在的態度ともに改善させることができることが明らかとなった。また、顕在的態度について男性の拒否的態度が肯定的な変容をすることが明らかになった。混合映像では顕在的態度を改善させることはできるが潜在的態度を改善させることはできないことが明らかとなった。また、顕在的態度では、性別による違いはなく、拒否的態度、統合教育、自己中心性、交流の当惑が介入によって態度が肯定的になることが明らかとなった。