坪内卒論


援助規範意識と実際の援助行動の関連 

坪内健悟

 本研究では、援助規範意識と実際の援助行動にはどの程度差異があるのかを検討する。また、場面想定法を用いていじめに直面する場面を加害者・被害者・周囲の人の3場面を想定し、場面想定前と場面想定後で援助規範意識に変化が表れるかを検討した。参加者は大学生60名を対象とし、うち男性31名、女性29名であった。参加者には援助規範意識尺度、具体的援助行動、場面想定、援助規範意識尺度の順番で回答を求めた。
 返済規範、自己犠牲規範、交換規範、弱者救済規範の4つの規範の平均値を算出した結果、どの規範においても女性の方が男性よりも平均値が高かった。このことから、女性の方が男性よりも援助規範意識が高いことが示唆される。また、「援助規範意識」、「具体的な援助行動」、「場面想定後の援助規範意識」の得点の平均値に、性別とシナリオと条件(援助規範意識、具体的援助行動、場面想定後の援助規範意識)の間に有意な差があるかを検証するため、性別とシナリオを被験者間、条件を被験者内として、性別(男性、女性)×シナリオ(A、B、C)×条件(援助規範意識、具体的援助、場面想定後)の3要因分散分析を行った。その結果、自己犠牲規範と交換規範に有意な差、傾向がみられた。
 自己犠牲規範で有意な傾向は女性群において援助規範意識条件と具体的援助条件よりも、場面想定後条件の方が低いところでみられた。また、援助規範意識条件では女性群の方が男性群よりも平均値が高く、具体的援助条件でも同様に女性群の方が男性群よりも平均値が高い部分で有意な差がみられた。交換規範で有意な傾向は男性、女性の両性別軍において援助規範意識条件と場面想定後条件よりも、具体的援助条件の方が高い部分で有意な傾向がみられた。また、シナリオA、B、C群において援助規範意識条件と場面想定後条件よりも具体的援助条件の方が高い部分で有意な差がみられた。
 これらの結果から、想定する場面によって援助規範意識に与える影響が異なる可能性が考えられる。返済規範、自己犠牲規範、交換規範、弱者救済規範の4つの規範すべてに影響する場面を想定させるのではなく、各規範それぞれに影響を与える場面を想定させることで援助行動を促進させることにつながると考えられる。また、援助規範意識が高いから実際に援助行動を起こすわけではなく、自身の経験や周囲の状況も実際の援助行動に影響を与えていることが考えられる。