村山修論


高次脳機能障害者の家族における介護負担の構造の検討

村山彩夏

 高次脳機能障害者の介護家族への支援が必要であることが指摘されている。家族介護者の介護負担や介護負担に影響を与える要因についての研究が数多く行われている。しかしながら, 高次脳機能障害者の家族介護者に焦点を当てて家族介護者の介護負担について検討した研究は限られている。ストレス認知理論を応用した介護ストレスの理論的モデル (Schulz et al., 1988; 新名, 1991) は高次脳機能障害者の介護負担においても利用できる可能性が指摘されている (赤松ら, 2003)が, 高次脳機能障害者の介護家族を対象とした介護ストレスの理論モデルや対処方略を踏まえた研究はあまり行われていない。
本研究では, 質問紙による調査をもとに, 介護ストレスの理論モデルや対処方略を踏まえ, 高次脳機能障害者の家族介護者の介護負担の構造を明らかにすることを目的とした。
 階層的クラスタ分析を用いて, ZBI-Jの得点で高次脳機能障害者の家族介護者を分類した。その結果, 調査参加者は, 7つのクラスタに分類され, 家族介護者の介護負担は一様ではないということが明らかになった。また, 重回帰分析によって先行研究で指摘されているようなストレスへの対処方略や役割意識, 社会資源は介護負担の生起要因ではなく, ソーシャルサポートである家族役割や社会的欲求によって介護負担が低減され, 介護負担はストレス反応を引き起こすという構造が明らかになった。
 本研究では, 介護者のリソースがストレッサーやストレス症状に与える影響について検討していない。また, 家族会等とのつながりを持たない介護家族の実態については把握することができていない。今後はそれらについても検討する必要があると考えられる。