大学生におけるスマートフォン依存症と先延ばし行動および生活習慣との関連性
金子 明日翔
本研究では、大学生のスマホ依存について明らかにするとともに、どのように先延ばし行動および生活習慣と関連するかを検討することを目的とした。加えて、スマホ依存の傾向の高さが先延ばし行動および生活習慣に影響が見られるか検討した。
参加者は、129名(男性55名、女性77名)であり、使用した尺度は館農(2019)の日本語版スマートフォン依存スケール短縮版(S AS SVJJ)、林(2007)G
eneral Procrastination Scale (GPS) 、高橋(2005)の生活習慣に関する調査票を一部改訂した生活習慣に関する調査票を使用し、質問紙調査を行った。
分析方法は、各尺度の記述統計量を求め、性差が見られるか検討するため、対応のないt 検定を行った。さらに、各尺度間の関連性を相関分析にて検討した。次に、スマホ依存得点の中央値であった3
5 点以上をスマホ依存傾向の高い「スマホ依存高群」、未満をスマホ依存傾向の低い「スマホ依存低群」とした。そして、スマホ依存の高低によって、先延ばし行動および生活習慣に違いがみられるか検討するため、対応のないt
検定を行った。また、生活習慣の下位項目である食事得点、運動得点、喫煙得点、飲酒得点、睡眠得点、生活習慣評価得点に対して、対応のないt 検定を行った。 その結果、スマホ依存得点において、女性が男性より有意に得点が高かったことから、女性の方がスマホ依存傾向にあることが示唆された。これは、先行研究(栗林ら,2015、松島ら,
2017)を支持する結果となった。一方で、先延ばし行動得点および生活習慣総合得点に有意な差はなかった。相関分析では、スマホ依存得点と先延ばし行動得点に有意な弱い正の相関が見られた。したがって、スマホ依存得点が高いと、先延ばし行動得点も高くなる関係が示唆された。一方で、スマホ依存得点および生活習慣総合得点、先延ばし行動得点および生活習慣総合得点には、有意な弱い負の相関が見られた。そのため、スマホ依存得点が高いと生活習慣総合得点が低くなり、先延ばし行動得点が高いと生活習慣総合得点が低くなる関係が示唆された。
次に、スマホ依存の高低によって先延ばし行動および生活習慣に差が見られるか検討するため、対応のないtt 検定を行った。結果は、スマホ依存の傾向が高いスマホ依存高群のほうが、スマホ依存低群よりも先延ばし行動得点が有意に高いことが示された。さらに、スマホ依存高群はスマホ依存低群よりも生活習慣総合得点が有意に低いことが示された。そのため、スマホの使用が先延ばし行動を生起させやすい原因の11つとなっていることが示唆された。また、スマホの依存は生活習慣においても悪影響を及ぼしていることから、過度なスマホの使用は危険であることが考えられた。
最後に、スマホの高低による睡眠得点および生活習慣評価得点において、睡眠得点に有意な差は見られなかったが、生活習慣評価得点において、スマホ依存低群の方がスマホ依存高群より有意に得点が高かった。この結果は、スマホ依存が睡眠に影響を及ぼしている定説と真逆ではあるが、依然として睡眠に問題を抱えている学生が多いという指摘からも、今後も注意が必要であると考えられる。また、スマホ依存傾向の低いスマホ依存低群は、自身の生活習慣について良いものであると捉えており、スマホに依存しないことが自身の生活習慣をより良くするために必要であると考えられる。
本研究では、男女のスマホ依存得点に差が見られた原因は明らかになっていない。そのため、男女のスマホの使用している目的などを検討することが、上記の問題を解決できる糸口であると考える。また、スマホ依存の研究はまだまだ少ない傾向にある。今後、スマホ依存に対しての研究に注力すると同時に、スマホ依存に陥ってしまった時の有効な対処法なども検討することが重要だと考える。