松浦卒論


大学生の介護イメージ調査

松浦大介

 現在、実際の介護現場における介護の実態を対象にした研究は多くされているが、将来の介護に対して人々がどのような不安を抱えているのかを対象にした研究は乏しいのが現状である。そこで本研究は、今後の高齢化社会に向けた知見を得る研究につなげていくため、改めて若者が介護に対して抱いているイメージを明らかにすることを目的とした。
 大学生12名を対象に質問紙を用いて、「介護全体」「家族介護」「介護職」の3項目のイメージを調査した。「介護全体」項目では「高齢者を介護すると想定した際のイメージ」を自由記述させ、その際「特定の人物を想定したか、それはどんな人物か」を回答させた。また想定の際、「どのような印象を抱くか」をVASで回答させた。「家族介護」項目では「将来家族が介護が必要になったと想定した際、すると思うか」を「すると思う/わからない/しないと思う」で回答させ、想定した際のイメージを自由記述とVASで回答させた。「介護職」項目では「将来介護職に就いてもいいと思うか」を「就いてもいいと思う/どちらとも思わない/就きたいと思わない」で回答させ、「将来介護職に就いたと想定した際」のイメージを自由記述とVASで回答させた。
 質問紙で得られたVASの平均点を算出した結果、「家族介護」項目はニュートラルな印象であったが、それ以外は悪い印象であることがわかった。また項目ごとのVAS平均点には有意差が見られるのかを検討するため、Willcoxonの符号付順位検定を行った。結果、「介護職」項目のVAS平均点の方が「家族介護」項目のVAS平均点より5%水準で有意に高く(z=-2.18, p=.05)、参加者は「介護職」項目の方により悪いイメージを持っていることがわかった。
 次に自由記述内容を、川喜多(1986)を参考にしたkj法によってカテゴリー分けした。「介護全体」項目は、【精神的な不安】【大変(仕事への不安(肉体))】【自分の生活への心配】【仕事への不安と相手への配慮】【相手への配慮】【未来的 心配 予測】【体力面の不安】の7つのカテゴリーに分類され、いずれもネガティブであった。「家族介護」項目では、【介護はしたくない】【意欲的ではない】【意欲的である】【仕方なく】の4つのカテゴリーに分類され、【意欲的である】カテゴリー以外はネガティブであった。「介護職」項目では、【人間関係】【否定的】【ポジティブ】【条件次第】【イメージ(悪い)】【体力面できついと思う】の6つのカテゴリーに分類され、【ポジティブ】カテゴリーがあるが総じてネガティブであった。
 結果より、大学生の介護に対するイメージはネガティブなものであったといえる。また「介護」と一言で言っても、それは大きく「家族に対する介護」と「職業として他人に対する介護」に分けられると考えられる。全体として、介護に対するイメージはネガティブである傾向は変わらないが、3項目の中で「家族介護」は他の2項目に比べ自由記述で得られた回答内容に特徴が見られ、またVAS平均点においても「介護職」項目とは有意差がみられたことから、「家族介護」≠「介護職」・「介護全体」という傾向があると考えられる。加えて、「介護職」と「介護全体」の2項目間には、自由記述内容が類似するものが多く見られるという関係性があったことから、「介護職」≒「介護全体」という傾向が考えられる。