荻原卒論


体育会学生における挫折経験が抑うつと達成動機に与える影響 

荻原幸那

 本研究では、体育会学生における挫折経験が抑うつ気分と達成動機に与える影響について検討する。参加者は体育会に所属する大学生182名を対象とし、うち男性は122名、女性は60名であった。調査協力部活動はフェンシング部、バスケットボール部、バレーボール部、バドミントン部、サッカー部、剣道部、卓球部の7競技であった。参加者には挫折経験を問う内容の質問紙、CES-D、達成動機測定尺度について回答を求めた。
 性別、競技特性(個人競技とチーム競技)により抑うつ、挫折経験、達成動機の得点の平均値に差があるかどうかを確認するために、対応のないt検定を実施した。その結果、独立変数が性差のt検定では、抑うつ、挫折経験、達成動機に有意な差はみられなかった。独立変数が競技特性のt検定では、抑うつ、挫折経験、達成動機に有意な差がみられた。抑うつにのみ個人競技の方がチーム競技より有意な差がでた。
 達成動機測定尺度では各項目で「自己充実的達成動機」と「競争的達成動機」の下位尺度ごとに尺度得点を算出した。「自己充実的達成動機」と「競争的達成動機」、性差で比較した。自己充実的達成動機では男女間で差があり、競争的達成動機では男女間で差は生じなかった。
 抑うつではCES-Dの得点を参加者ごとに算出した。正常対照群と気分障害群に分類し、さらに気分障害群を「身体症状」、「対人関係」、「うつ気分」、「ポジティブ感情」に分類した。平均値で比較すると、1番大きかったのは「ポジティブ感情」、次に「身体症状」、「うつ気分」、最後に「対人関係」であった。
 挫折経験の内容の質問紙では、予備調査で得た内容を本調査用に作成し、調査を行った。自由記述も一緒に実施した。自由記述には挫折経験を挫折経験と捉えていない人もいることが判明した。挫折経験と抑うつ、挫折経験と達成動機について相関を求めた。挫折経験と抑うつは有意に中程度の正の相関を示した。挫折経験と達成動機ではほとんど正の相関はなかった。
 これらの結果から、体育会学生における挫折経験が抑うつ気分には中程度な影響を与え、挫折経験が達成動機にはほとんど影響を与えなかった。また、挫折経験の質問紙において、自由記述を実施したおかげで、必ずしも調査者全員が挫折経験を挫折と認識しているわけではないということが明確になった。