マインドフルネスの介入による児童の運動パフォーマンス向上及びマインドフルネス特性についての検討
飯塚 大翼
本研究は、小学生の児童を研究対象として、マインドフルネスエクササイズを行うことで個人のマインドフルネス特性に変化があるか検討する。またマインドフルネスエクササイズを行う前後で時間切迫場面における運動パフォーマンスにどのような影響を及ぼすのかを検討することを目的とした。初めに日本語版FFMQ短縮版を用いてマインドフルネス特性についての調査を行った。実験課題として幅1mのゴールに向かって10m離れた地点から1球を3秒以内に計8回蹴り入れた。統制群については2週間経過後再度実験課題を実施し、エクササイズ群についてはプレ期の課題を行った後1日3回、計2週間のビーズ通しエクササイズを行った後再度課題を行った。心理教育群においてはプレ期の課題終了後にマインドフルネスについての説明および30秒間の呼吸に意識を向ける瞑想を行い、2週間経過後再度課題を行った。全ての群においてプレ期から2週間経過後の課題実施前に再度同様の質問紙調査を行った。
得られたデータを群ごとに二元配置分散分析した結果、統制群についてはプレ期と比較してポスト期の課題得点について差は見られなかったがマインドフルネス特性が有意に高まっていた。課題得点が向上していないにもかかわらずマインドフルネス特性が高まった理由として、質問紙調査の回答の際に選択肢の間を円で囲っている部分があり、正確な回答の把握ができない回答が複数存在していたことによって参加者の回答とは異なった解釈をしてしまった可能性がある。エクササイズ群では課題得点及びマインドフルネス特性、下位尺度の「判断しないこと」について有意差が確認され、マインドフルネスエクササイズの介入による運動パフォーマンスの向上、個人のマインドフルネス特性が高まったことによる身体の自動操縦状態の認識の向上が確認された。心理教育群についてはいずれも差が見られなかったことから心理教育のみでは個人のマインドフルネスを高めることは困難であることが確認された。
今後の課題として、実験を実施する環境を完全に統一し参加者に及ぼされる影響を揃えること、また質問紙については日本語版FFMQ短縮版を参考にして小学校年代の児童でも適切に理解ができる語彙を選定することで児童のマインドフルネス特性を測定する心理尺度の作成が必要であると考える。