大野卒論


少年犯罪における原因帰属、感情生起による更生支援意欲への影響

大野 ひゐの

 本研究は、少年犯罪における原因帰属と更生支援意欲、共感や怒りといった感情生起の関連を検討することを目的とした。
 参加者は99名であり、戴ら(2006)の非行少年に対する原因帰属尺度を中心に、少年非行に関する世論調査(内閣府, 2015)の調査で用いられた項目を修正した原因帰属尺度と、小嶋(1983)の感情尺度、少年非行に関する世論調査(内閣府,2015)の更生支援意欲尺度を使用して質問紙調査を行った。
 分析方法は、各尺度の得点において記述統計を求め、各尺度の関係性を示すために相関分析を行った。さらに、「支援意欲得点」を目的変数とし、原因帰属における4つの領域と「感情得点」を説明変数とした重回帰分析を行った。
 結果、原因帰属と更生支援意欲の関係において、「人格領域」と「夜間の繁華街などにおける少年への声掛け活動」「参加したくない」という項目にそれぞれ弱い正の相関がみられた。また、家庭領域と「参加したくない」という項目に弱い正の相関がみられた。また、重回帰分析の結果では、「参加したくない」という更生支援尺度の下位項目には、原因帰属における「人格領域」が影響することが示された。これらの結果から、人格に帰属していても、夜間の繁華街などにおける少年への声掛け活動への意欲が高まる関係は認められたが、人格への帰属と更生活動に参加したくないという更生支援意欲の低下はより強く関係していた。つまり、人々は原因を人格に帰属すると、更生支援意欲が低下しやすいと考えられる。また、非行少年に対し、家庭に原因を帰属すると更生支援意欲が低下することも示された。ここから、人々は非行少年の家庭に問題がある場合、非行少年自身に支援をしても更生が難しいと考えるのではないかと思われる。
 感情と更生支援意欲の関係において、好感情因子において「少年とのスポーツ活動」「少年との街頭における清掃活動や落書き消し活動」「夜間の繁華街などにおける少年への声掛け活動」「個々の少年との連絡や面接」「少年との料理教室」と弱い正の相関が、否定感情因子において「参加したくない」と弱い正の相関が示された。また、重回帰分析を行った結果、「少年との面接や連絡」には好感情因子の影響が、「料理教室への参加」には好感情因子と否定因子の影響が示された。これらの結果から、人々が非行少年に対し好感情を抱くと、更生支援意欲が沸き、否定感情を抱くと、更生支援意欲が低下することが考えられる。否定感情を抱くことで、「料理教室への参加」の意欲が下がるという結果が示されたことに関して、料理教室では凶器に成り得るものを使用するため、否定感情を抱いている人は参加したくないことが示唆される。
 今回の研究では、更生支援意欲を向上させる少年犯罪に対する原因帰属は人格領域以外に見つからず、更生支援意欲を向上させる感情は、非行少年に対する好感情のみであった。今後は、他の要因も加え、再検討をしていく必要がある。