吉田怜花卒論


消費行動における心理的距離の交互作用の検討 

吉田 怜花

 ネットが発達した現代において消費者心理に影響を与えるとされている口コミについて、購買行動の際の商品の評価に口コミが影響を与えるかを検討することを目的として実験を行った。また、心理的距離に含まれる時間的距離と社会的距離を用いて、他者の中で遠近を設定した社会的距離と現在より先の時間軸の中で遠近を設定した時間的距離の間に交互作用が認められるかを検討することも実験の目的であった。実験1では、2日後条件 vs 2か月後条件、同じ大学条件 vs 他の大学条件を設定し実験を行った。参加者にカメラの写真と特徴を記した表を提示し、口コミがない場合とある場合で「商品の魅力度」を評定してもらった。さらに、「口コミの参照度」と「口コミの影響度」を評定してもらった。その結果、口コミの有無によって「商品の魅力度」の評定に差がみられた。しかし、時間的距離、社会的距離についてはどちらにも有意な差はみられなかった。実験2では、実験1の条件に半年後条件と社会人条件を追加し実験を行った。その結果、実験1・実験2の両方で口コミの有無による「商品の魅力度」の評定に差があり、実験2で社会的距離の同じ大学条件の「商品の魅力度」と社会人条件の「商品の魅力度」との間に有意な差がみられた。時間的距離には実験1・実験2ともに有意な差はみられなかった。実験1、実験2ともに「口コミの参照度」と「口コミの影響度」については、口コミありの「商品の魅力度」の評定値との間に有意な相関がみられた条件があった。また、参加者の多くがネットショッピング経験者であることがわかり、ネットショッピングをする際の口コミの平均閲覧件数は実験1では11.78件、実験2では7.76件であった。口コミの有無によって「商品の魅力度」の評定値に差があったことから、商品の評定における口コミの有意性が確認された。2004年に電通が提唱した購買行動モデルに情報共有が含まれ、商品の情報共有ツールとして口コミが身近なものになってきているために得られた結果だと考えられる。社会的距離の違いによって商品の評定に差があったことから、年代の違いが商品の評定に影響を与えている可能性がある。一方で、今回の実験では、時間的距離の条件間に差がみられず、また、相関も実験1と実験2で結果が大きく異なっていた。このことから、実験の精度を上げ、引き続き検討していく必要がある。