芝崎卒論


相槌の頻度と会話環境が対人魅力にどのような影響を及ぼすか 

芝崎功育

 本研究では、対面条件とWeb会議システムを用いた条件を設定し、対人魅力が会話中の相槌の有無によってどのような影響を受けるのかを研究することを目的とした。加えて、Web会議システムへの慣れと各尺度や発話時間との関連についても検討を行った。
 その結果、対面条件においては相槌を打たない条件より相槌を打つ条件の方が得点は高かった。したがって、対面で話す際は相槌を打つほうが話し手によりよい印象を与えられることが分かった。相槌を打つことは話し手にとって好ましい反応であり、ポジティブな印象を与えられることが分かった。Web条件では相槌を打たない方が「快印象」「社会的望ましさ」においてよりよい印象を持たれることが分かった。これらは、Web会議システムの特徴がこのような結果を生じさせたと考えられる。Web会議システムは音声、映像の遅延や表情の読み取りづらさといった対面とは異なる特徴を持っており、それらが発言の重なりなどの会話のしづらさを生んでいる。発言の重なりから同じ発言を繰り返すことによって不快な感情を生起したり、本来打たれる相槌とは少し遅れて相槌を見聞きしたりするためきちんとしたタイミングで相槌ができていないと捉えられることが誠実さや真面目さといった社会性を低く評定する要因となったと考えられる。
 それぞれの条件ごとの発話時間の差はみられなかった。この結果から、Web会議システムを通した会話においては、相槌を打つことが発想を促進するほどの刺激にならなかったことが推測される。また、対面条件でもみられなかった要因として課題の難易度に個人差があったと考えられる。授業等でこの課題について考えたという参加者の意見もあったことから、改善の余地があると考えられる。
Web会議システムへの慣れと各尺度、発話時間との関連はみられなかった。本研究の実験手法では、参加者がWeb会議システムを操作することがなく対面とほぼ同様の手法となっていた。したがって、参加者のWeb会議システムへの慣れ不慣れに関係なく課題に取り組むことができたため、相関がみられなかったことが推測できる。また、1セッション10分という時間や参加者の主観で回答するという形式も影響を与えたことが考えられる。
本研究では、感染症対策のために実験者、実験参加者ともにマスクを着用していた。マスクは印象や魅力に影響を与えることが分かっているため、本研究で解明したかった相槌の機能について正確に測定できたと言い難い面がある。今後は実験環境や課題の設定を改善しながらも、他の要因を排除しすぎると日常性が失われるため注意をしながら研究を行う必要がある。