専修大学経営学部 関根ゼミ


専修大学経営学部 関根ゼミにおけるkintoneの利用イメージ

1.目的

 専修大学経営学部の関根ゼミでは、2014年度より、サイボウズ株式会社さまのビジネスアプリ作成クラウドkintoneを、ゼミの活動に活用させていただいております。その中で得られたさまざまな活用方法を公開することで、必ずしも定型的な業務ではない、ゼミ活動の場でもkintoneが役立つことをご理解いただき、非定型的な使い方をする場合の参考としていただければと考えております。

 ここでは、ゼミ活動で直面する様々なシチュエーション毎に、スペース、スレッドやアプリの使い方を示しています。



2.ゼミ活動

 本ゼミでは、およそ以下の活動をしています。

①輪講

 専門書をグループ単位で分担して読み、その内容をまとめて発表し、質疑応答を行います。

②演習

 課題解決に関する様々な演習を、グループ単位で行い、結果を発表します。

③卒業論文

 4年次に、各自で、卒業論文の企画、調査・検討、発表、そして論文作成までを行います。

④神奈川産学チャレンジプログラム

 3年次に、一般社団法人神奈川経済同友会が主催する神奈川産学チャレンジプログラムにグループ単位で参加し、企業からいただいたテーマに対する答えを検討して発表します。これは、神奈川経済同友会の会員である数十の企業および団体と、神奈川県内に拠点を持つ大学が参加するもので、産学連携による学生の人材育成を目的とした課題解決型研究プログラムです。

 神奈川産学チャレンジプログラムは、およそ、以下のスケジュールです(2017年度現在)。

5月初め:テーマ希望提出
5月末:テーマ決定、企業による説明会、検討開始
9月末:レポート提出
10月~11月:企業の方々の前でプレゼンテーション
12月:優秀賞の発表

 優秀なグループには、企業から最優秀賞あるいは優秀賞をいただくことができ、学生たちは、その賞を目指してグループ活動を行います。このような長丁場の活動に、グループで参加するのは、学生にとって、多くの場合、初めての経験です。

  神奈川産学チャレンジプログラムの概要

  神奈川産学チャレンジプログラムのテーマ例

 当ゼミでは、上記①~④のすべての活動でkntoneを利用しています。実際にどのようなシチュエーションで利用しているかを示した後、それぞれについて、実際の利用方法を示すことにします。大きく分けると、以下のシチュエーションで特徴的な使い方をしています。

  1. 神奈川産学チャレンジプログラムのグループ活動
  2. 卒論などの内部発表に対するゼミ内評価
  3. ゼミ管理


3.kintoneを利用するシチュエーション

3.1 神奈川産学チャレンジプログラムのグループ活動

 本ゼミの活動は、上記に示したように、卒業論文を除く多くが、グループでの活動となっています。従って、kintoneは、学生あるいは教師との間の情報共有に使っています。ここでは、特に効果が高い神奈川産学チャレンジプログラムでのさまざまな情報共有の方法について、プログラムの進行の手順に従って示します。尚、図の内容を消したり、モザイクを書けていますが、個人情報保護や企業情報の保護の観点からご容赦ください。本プログラムは、およそ以下の手順で実施しています。

(1)全体目標を共有する

(2)プログラムの全体工程を見える化する

(3)企業によるテーマの説明会に参加する

(4)調査した情報を共有する

(5)アイデアを出し合い、その結果を整理して共有する

(6)レポートを分担して作成する

(7)プレゼンテーション資料を分担して作成する

(8)プロジェクトを閉める


3.2 卒論などの内部発表に対するゼミ内評価

 ゼミ内では、神奈川産学チャレンジプログラム、各種の演習、そして卒業論文の節目において、ゼミ内で発表をしてもらい、それを学生たちが評価したり、コメントしています。その際、従来であれば、紙で点数をつけたり、コメントすることが多かったのですが、それでは、コメントの集約に時間がかかってしまいます。そこで、発表時に、聞いている学生が、コメントをその場でアプリに投入するようにしました。これにより、即時で、発表者が意見を見ることができるようになりました。ここでは、卒業論文を例に、コメントの様子を示します。

 評価の方法の概要

3.3 ゼミ管理

 本ゼミでは、上記の①~④についての情報を、学生がゼミに入ってから卒業するまでの2年間にわたって記録するようにしています。当初は、Excelで管理していましたが、それぞれの学生が、2年間どのような活動をしてきたのか、あるいはゼミ全体でどのような演習をやってきたのかなど、いろいろな視点から見れるので、kintoneのアプリによる管理に変えました。活動結果の成果物をここに登録できることもメリットです。ここでは、アプリの構成について示します。

 ゼミ管理の概要

4.kintoneを利用しての感想

 以上のさまざまなシチュエーションでのkintoneの利用方法を整理すると、kintoneは次のような点で優れていると言えます。

(1)グループ活動をするにあたって、定型的な情報、および非定型的な情報の両方を、メンバ間で共有できます。

 ①定型的な情報:アプリを用いて共有できます。当ゼミの例で言うと、製品・サービスに関する調査情報、参考文献の一覧、ヒアリング先の一覧とその結果、企業に提出するレポートやプレゼンテーション資料などのファイル、そしてゼミ管理に用いた様々なデータがあります。

 ②非定型的な情報:スレッドの投稿、およびスペース、スレッド、アプリのヘッダにあるポータルを用いて共有できます。当ゼミの例で言うと、投稿ではメンバ間の対話の内容があり、ポータルについては、次の(2)で述べます。

(2)スペース、スレッド、アプリのそれぞれについて、ヘッダとなるポータルがあり、それぞれの範囲で重要な情報を冒頭に表示することで、その部分の概要が把握できます。例えば、

 ①スペース:プロジェクト全体の目標、計画、進捗状況

 ②スレッド:スレッドの内容に合わせた重要情報。次のような利用例が挙げられます。

  a)製品調査のスレッド:調査結果のまとめ
  b)アイデア出しのスレッド:ブレインストーミングの結果の写真
  c)レポート作成のスレッド:レポートの目次案と分担

 ③アプリ:収集する情報に合わせた、収集方法や収集結果のまとめ。次のような例が挙げられます。

  a)ヒアリング用アプリ:ヒアリングのための質問項目
  b)調査用アプリ:調査結果のまとめ

(3)前の(2)に関連して、冒頭の記述を視覚的に見易くするために、フォントのサイズや色を変える、写真を添付できるなど、デザインを工夫することができます。例えば、(2)の②のc)であれば、誰がどの部分を執筆するかの分担や進捗度を、色で表現しています。

(4)定型的な情報を管理するアプリのレコードに、非定型的な情報であるコメントを付加できます。例えば、(2)の③のa)では、各レコードに記述された調査対象に関連して、コメントでメンバが対話をしています。

(5)必要に応じて、アプリとExcelデータを連携させることができます。例えば、アプリに収集した調査情報や参考文献をExcelにダウンロードし分析したり、さらにWordファイルのレポートに組み込むことができます。

謝辞

 kintoneの利用にあたって、これまでさまざまなご支援をいただいたCybozu株式会社、および同社の中村龍太さまに感謝いたします。