黄斑円孔手術体験記


目薬をさす儀式


2010年7月1日〜9月末

手術後からすぐ目薬を4種類、一日4回のものを2本、2回のものを2本、ささなければなりませんでした。抗生物質、抗菌作用のもの、炎症防止、癒着防止用のものです。

看護師さんが一覧表を書いてくれましたが、目薬をさす順番もあって、覚えるのが大変です。その一覧表のうえに目薬を置いていくことで、間違えないようしていたら、「そんなことをしたひとははじめてだ」といわれました。

途中から眼圧を下げる目薬が1日3回ということになり、組み合わせが悪く、一日5回さすことになりました。

正しい目薬のさし方として指導された手順があります。まず両手を指1本1本丁寧に石鹸で洗います。それをティッシュでふき(タオルにはすでに雑菌があるので)、つぎに眼の周囲をティッシュでふき、顔を上に向けて、最初の目薬をさします。眼の周囲に溢れたものがあれば、皮膚がただれるのですぐにティッシュでふき取り、また、鼻を通って口から体内に入らないように、しばらく眼頭の下を押さえておきます。それから顔を前向けにしていいのですが、眼をつぶったまま(左眼でちらちら時計を見ながら)5分間待って、つぎの目薬をさします。その繰り返しを4回です。その後、喉に右奥から流れだしてくる苦いものがあれば、それは目薬で、体には強すぎますのでうがいして吐きだします。1時間も経ってから、たらっと流れてくることもあります。

一度にさす目薬は3本か4本ですが、いまなら慣れてきたので20分、慣れるまでは30分はかかりました。合計すると一日2時間は目薬をさしていることになりますね。それに、目薬をさす間隔は最低4時間で、5時間が理想なので、さしたあと、つぎは何時頃か、いつも頭に入れておく必要があります。こうした生活を2、3ヶ月、わたしの場合は9月まで続けなければならないのです。

目薬をさして眼をつぶっているあいだ何をしているかって? たいていは無の境地、「座禅のようなものです」といえば、禅宗のひとに怒られそうです。元気があれば首を回す運動をしたりします。そのうち腹筋運動までしはじめるのではないかと思いましたが、全然そうはなっていません。他方、へたに思考しはじめると、時間が分からなくなってしまうのでまずいようです。思考するということは、意外に、あっという間に時間の経つことなのです。


2010年8月14日

昨日の夜、眼圧を下げる目薬が最後の一滴となって、ついにやめることができました。この目薬は「なくなったらやめていい」と医師にいわれていたもので、体に入ったら特に悪い影響があるという薬でした。これ1本減っただけで、心理的負担感が随分違います。

でも、考えると変ですね。目薬は上手なひとだと1滴で入りますが、下手なひとだと1回に何滴も使って、あっという間になくなってしまいます。それで「なくなったらやめていい」とは何を意味するのでしょうか。わたしは近視なので目薬がよく見えて、大抵は1滴で入ります。だとすると、なかなかなくなりません。

薬局で聞いたところによると、医療用の目薬は、1回2滴で45回分が基準だそうです。ということは、1滴で入るひとは90回分、1日3回とすれば、30日分です。昨日なくなったというのは、この目薬をさしはじめたのが7月11日でしたから、ほぼ計算どおりです。もっと前にやめたってよかったはずです。

眼科医のみなさん、「なくなったらやめていい」という処方は、ぜひやめてください。お願いします。

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