黄斑円孔手術体験記


睡眠障害


2010年5月〜6月

病気の徴候がひどくなるにつれ、起きる時間が早くなっていきました。3時や4時に寝るのですが、起きるのは11時、10時と早まっていきました。わたしは学生時代には10時間寝ていましたから、それでも眠たいです。

なぜ目ざめてしまうのか、おそらく悪夢によってです。夢のなかで見るものにも、病状が出ていたし、夢のなかの登場人物や動物たちが片目に傷を負っています。夢は脳で起こるのか、それとも夢を見ているときにそのイメージは、やはり眼のなかで網膜像として現われているのか、だれも研究してなさそうに思います。

6月4日にはっきりとした病状になったとき、そこから10日間は、一日3-4時間しか寝ていなかったと思います。6月14日にはじめて精神安定剤を飲んで、すぐに3時間寝て、その後、睡眠導入剤が不可欠になります。それで7時間睡眠ができるようになりました。

おそるべきは精神安定剤、すべてを他人事のように感じさせてくれます。だから不安が消えるのですし、元気に仕事もできるのですが、それを続けるとすれあ、仕事する動機も消えてしまうのではないかと不安になります。その不安を消すために、もっと精神安定剤が必要になる?


2010年8月10日

ある意味で後遺症ともえいますが、「6時起床病」とでも名づけるべきものです。何時に寝ても、朝の6時前後に眼が覚めます。午後10時に寝ようと、午前2時に寝ようと、6時に眼が覚めてしまいます。睡眠時間が6時間を切ると、その日一日何もできないほどきついので、仕方なく夜11時には睡眠導入剤を飲んで寝ます。

わたしは深夜の時間帯が大好きなので、これは入院生活の「後遺症」だと考えているのですが、心療内科の医師は断固として認めてくれません。「健康的な生活になってよかったですね」と誉めてくれます。

結局、心療内科というところでは、精神分析やカウンセリングによって治療するのではなく、脳に働く多数の薬品について詳しくて、どの薬を処方するかについてアドバイスするのが仕事のようです。そして、ひたすら薬を飲むことを勧めてくれます。ある種、高度薬剤産業化しているともいえなくはありません。「うつ病」など、薬の依存症にして儲けようとする病院もあるかもしれませんね。

わたしは、以前のように、好きな時刻に1杯のワインで楽しくなって眠る方が、白くて小さい粒を飲んで、ただ横になり、何も考えないようにするよりは、よほどいいと思うのですが、いまなおワインで眠る力がありません。わたしの講義にときどきいる、睡眠力の強い学生さんがうらやましいです。でも、朝の森の散歩ができるようになったから、それもいいか・・・。


2010年8月18日

昨日は、睡眠導入剤を少しだけ飲んで寝て、1時間半後に目が覚めたので、もう少し飲んだら、さらに2時間後に目が覚めたので、結局いつもの量まで全部飲んで寝ました。それでも朝の5時過ぎに起きました。大失敗です。

しかも、奇妙なことが起こりました。2時過ぎに半分飲んだわけですから、起きた5時以降、9時頃まで薬が効いているわけです。9時に散歩に出かけて愕然としました。5時から7時頃まで、自分が何をしたか覚えていないのです。顔を洗ったり、目薬をさしたりしたはずですが、記憶がありません。

認知症のひとたちのことを思い起こしました。ちょっと前のことを覚えていないとは、のんきになれるようなことではなく、何と不安でつらいことでしょうか。周囲のひとたちはイライラするかもしれませんが、やはり本人が一番気の毒なのだと思いました。


2010年8月21日

昨日から睡眠導入剤を4分の3にしていますが、今日は4時過ぎに起きてしまいました。精神安定剤を飲むとまた眠れる可能性が強いですが、いやです。で、ワインを飲みました。おいしかったけれども、眠れませんでした。たとえばこの文章もそうですが、やりたいことがいろいろ浮かんでくるので、本当は起きたいのでしょう。体さえついてきてくれれば、眠らなくたっていい。昼にがんばって「うたた寝」しよう。

ナポレオンは3時間しか眠らなかったといい、しばしば馬上で眠っていたといわれます。英雄のすごさとして聞いていたけれど、ひょっとすると睡眠障害だったのかも。

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