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Chapter
T


_ESCAPE,RESCUE,AND RECAPTURE:
FAMILIES AND THE WARTIME STRAUGGLE FOR FREDOM



Laura A. Moody夫人の陳述と事件の保証書(pp.43-45) 担当:新井伸之
        1864年5月25日、Washington、Laura A. Moody夫人の陳述と事件の保証書(pp.43-45)

【内容】
  時として、奴隷は家族を解放するため、他者に援助を求めることがある。例えば、首都Washingtonで軍の仕事をする三人の解放奴隷たちは二人の白人を雇った。目的はMaryland州南部にいる家族を連れ出すためだ。一行は上手いこと家族を探し出したものの、Washingtonへ戻る途上でMaryland州の役人に捕まってしまった。そのため、白人の妻の一人が戦争省に、夫の解放とこの事件の詳細を記述した保証書を要求した。

 Washington に住むLaura A. Moody夫人は夫、Geo. A. Moody氏の解放を要求している。彼はMaryland州のPiscatawayに住んでいる黒人女性を彼女の夫のもとへと連れて行こうとしていた。だが、彼は逮捕され、Lower Marlboro刑務所に入れられた。Moody氏は国が発行した通行許可証をもっており、たとえ止められたとしても、政府によって守られるはずであった。

[保証書] 1864年6月1日 第一独立部隊本部 中継小屋にて E. B. Tyler准将
 この事件の調査を任せたWilliam W. Woodの報告によると、Geo. A. MoodyとMr. Jonesは三人の黒人に、家族をPiscatawayに連れて行くために雇われていた。憲兵司令官、Captain Shutzが発行したとされる書類上では、妻や子供はMoodyとJonesに同行することになっていた。計画実行の段になると、彼らは家族を集めてWashingtonに向かっていたが、その途中でKirbyという名の警官にMoodyは捕まった(Jonesと黒人の一人は逃げた)。また二人の黒人と女と子供も捕まり、Dr. G. Harrisの指示によって刑務所へ送られた。一方、Washingtonへ戻ったJonesはMoodyの妻を連れてUpper Marlboro刑務所にMoodyに会うためにやってきた。だが、到着するとJonesは逮捕され、Moodyと共に監禁された。
 MoodyとJonesは家族を運ぶための荷馬車と馬を持っていたために、そして仕事上で三人の黒人と既知の仲であったために雇われたことが判明した。またさらに、MoodyとJonesは大変な貧乏で無学であること、そして家族は彼らの日々の努力によって生計を立てていたこと、MoodyとJonesは法的に兄弟となることで馬と荷馬車を手に入れ、それを使って国の仕事や自分達のサービスを必要とする仲間の仕事を引き受けていたことが判明した。
 MoodyとJonesは、時折三人の黒人が働く[Correl]で雇われ、この仕事(家族の解放)の報酬を出されて、引き受けた。そして彼らはPhillistines(ペリシテ人)の手となったのである。
 もしも、通行証が憲兵司令官によるものであったとしたら、それは彼らにとって永久の幸福を約束するものとなっただろう。彼らが何を考えていたとしても軍事権力の下で行動していた。もし可能であるならば、軍事委員会が彼らの事件を調査することを勧める。
[編者による追記]

 さらなる調査によって、MoodyとJones、そして二人の黒人はその地域の奴隷所有者の間で悪意の対象となっていたことが明らかになった。彼らは、捕まったPrince George’ s CountryからCharles Countryの刑務所へ移送され、一晩中足枷によってきつく床につながれ手錠をされていた。6月24日、戦争省の長官はMarylandの指揮官達に彼らの開放を保証するように指示した。
【考察】
 貧しい白人の中には、奴隷解放に協力することで報酬を受け取り、家族を養っていた者たちがいた。彼らが奴隷制に対してどのような考えをもっていたかはわからない。だが、奴隷解放を進めていくのは、決して奴隷自身だけではなかったことがわかる。そして、今回、その原動力となったのは仕事に対する報酬であったが、それも家族を養うためであった。奴隷制によって隔てられた黒人と白人の間であっても、家族への愛は変わらぬものであった。



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