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沖縄といえば、テレビや雑誌などで目にするきれいな海に、ゴーヤなどの特産品を使った沖縄料理、そして様々な観光スポットといった印象がすぐさま頭の中をよぎってくるということが合宿に行く前に自分が頭の中で描いていた印象であった。しかし50年以上前にはそのきれいな海や、料理、観光スポットといった好印象は無く、戦争によって血に染められた沖縄があったという事実があったのであるが、ゼミ合宿で沖縄に行く前の沖縄から遠く離れた横浜に住む自分にはそのような事実に関する知識は教科書などに載っていた数ページの内容のみであり、その実態といったものはほぼ知らないといっていいほどであった。しかし、合宿で沖縄の歴史的名所を見るたびに第二次大戦での沖縄戦の凄まじさや残忍さ、島民の苦悩といったもの50年以上のときを遡って、より現実感あるものとしてよみがえってきた。 那覇空港に到着してすぐさま目に飛び込んできたのは、航空自衛隊の戦闘機であった。そしてヘリコプターの離発着の訓練と思われる状況に出くわしたときに「きれいな沖縄」といった好印象は少しずつ崩れていった。何より自分の住んでいる神奈川県も厚木、横須賀といった基地があるのでそのような軍事施設には見慣れているのであったのだが、実戦を想定したようなヘリの離発着のような場面は見たことが無くショックに近い印象を受けた。そのような印象を受けつつもその日は首里城へ見学に行くのであった。 ゼミ合宿1日目は那覇市内を見学ということなので昼食をとった後に首里城へと向かった。そして首里城に到着すると城を囲む石垣に圧倒された。首里城については守礼門をテレビで見たことがあった程度で何の前知識が無かったのでこんなにも立派な城だとは考えてもいなく、同時に首里城を築いた琉球王国の当時の繁栄のすごさといったものもその石垣から感じ取ることができた。ただ、場内に入れば入るほどその尊厳さといったものは次第に無くなっていき、正殿を見たときには、特に感動を見出すことはできず、その外観からは首里城の歴史や伝統といったものは感じられなかった。なぜならどこか近代的な造りであって、あたかも観光向けの建築であるように見えたからだ。しかし、首里城の歴史を見てみればこの問題は解決できたのであった。首里城は沖縄戦で消失してしまっていて、戦後から修復作業を始めて今の首里城に至っているので近代的な印象を受けるということ当たり前なことであり、首里城は戦後の沖縄の復興の努力の現われであるのだ。そしてあのような巨大な首里城おも消失してしまった沖縄戦の凄まじさも同時に思い知らされたのであった。 2日目は沖縄南部にタクシーを使っての見学となった。沖縄南部は沖縄戦を物語る数々の史跡が残っているのである。そしてタクシー運転手の上原さんの詳しい解説のもとの見学であったのでそれぞれの史跡について一人ではわからなかったと思われることも分かり、とても充実した見学であった。見学場所は昨年米軍ヘリコプターが墜落した沖縄国際大学、普天間、嘉手納両基地。佐喜眞美術館では丸木夫妻の作品「沖縄戦の図」を観賞し、その大きさと沖縄戦の残忍さを伝えようとするメッセージ性の強さに衝撃を受けた。旧海軍司令部壕も回った。なかでも自分が強く印象を受けたのが「平和の礎」と「ひめゆりの塔」であった。平和の礎は沖縄県糸満市摩文仁平和祈念公園内に設置されており国籍を問わず沖縄戦でなくなった人を碑に刻銘したもので2004年6月までに239,092人の方の氏名が刻印されている。そこには北海道出身の方々の名も多く彫られてあり、沖縄出身者が大半を占めていると思われたので意外なことのように思われた。そして朝鮮半島の人々の名も刻まれていたのだが、まだ50年以上たった今でも氏名の確認が完了していないために碑にはまだ多くの余白があった。以前に自分は広島の平和記念公園に行ったことがあり、そこにも韓国人原爆犠牲者慰霊碑があり第二次世界大戦期に日本がアジア諸国に与えた被害があったことは知っていたが、同じような事実を沖縄という地でまた思い知らされ、自国の歴史に対する無知さを知った。そして、公園内の海に面する絶壁から多くの方が身を投じ、海がその血で赤く染まったと聞かされたときは、この青い海が赤く染まるほど沖縄戦ではたくさんの人が犠牲になった言うことが分かった。ひめゆりの塔について自分は何も知らなかったのであるが、その塔を見てすぐにここで何が起きたかがわかったような感じがした。そして沖縄戦で亡くなったひめゆり学徒と教師の遺影が展示されている場で自分より若くして亡くなった女学生の写真を見たときにはやるせない思いになり、心が少し沈んでしまった。 2泊3日のゼミ合宿で沖縄戦の実態を知ることで少し気分が落ち込むようなこともあったが、沖縄のきれいな海を見るたびにその気持ちは少しずつ晴れていった。今も世界では戦争が起こっており米軍基地がある沖縄もそれらの戦争に無関係であるとはいえない。また沖縄戦のような悲劇が起こりえるかもしれない。しかし、沖縄の海には人の気持ちを癒す力をもっているということがわかり、もう二度とこのきれいな海を血で汚さないという気持ちでいれば、同じ過ちは繰り返さなくてすむのではないだろうか。このことは単純すぎるかもしれないが、沖縄の海はそれだけの説得力を持っていると、今回のゼミ合宿で感じ取ることができた。 トップページ>ゼミ活動記録>藤島亮「ゼミ合宿レポート」 |