研究と教育 |
4.知識と図書館利用 (1997年4月4日東北学院大学経済学部新入生ガイダンスでのスピーチから) |
図書館委員ですので,図書館に関連した話をします。大学の中で,良い図書館というのは
教育研究スタッフの充実の次くらいに重要なことです。
図書館の利用方法など具体的なことは
このガイダンスでも事務のかたから説明があるでしょうし,何か分からないことがあれば随時
図書館に行って司書の方に訊いて貰えればいいので,ここでは教員サイドからということで,
私の思うところを話します。 ■大学で学ぶ知識とは?: 最初に非常に根本的なことを2つ言います。 まず,大学で学ぶ知識とはどんな知識かと いうことですが,これは稀少な知識(専門知識)です。 稀少というのは,どこでも手に入るものではない, という意味,つまり,一定の授業料を払い,時間をかけて通学して根気よく講義に出席しないと 手に入らない知識だということです。大学に入った者だけが,図書館で高価な専門書を 利用できるというのも「稀少」ということです。口コミや友だち同士の噂話,コンビニでの雑誌の 立ち読みで手に入るような知識をいくら寄せ集めても,大学で学ぶ専門知識にはならない。 せいぜい,何人かの友達の間でひけらかしたり,お喋りするための知識にすぎません。では, なぜ「稀少な知識」を学ばなければならないか,というと,これには色々あります。 1つ言えるのは,いわゆるエリートと呼ばれる人がいて,彼らは, 大学で学んだ知識や言葉を使って,法律,規則,その他色々な文書を作ったりして, 世の中に大きな影響を与えているということです。世の中が そうなっている以上(良いか悪いかは別にして),大学で学んだことが役立たないと 決めつけることはできない。 ■2種類の勉強: もう1つ根本的なことを言います。 勉強には2種類あるということです。1つは,小学校以来の やり方で,先生が授業で教えることを,順序通り,根気よく理解していけば自然に一定の知識が身に 付くというものです。こういう勉強をさせるには,高校に受かるため,大学に受かるためというエサを ぶらさげて,テスト,テストで追い立てればよいわけです。大学の授業も,卒業単位で追い立てて いるのですから,基本的にはこの勉強の仕方です。でも,そういうやり方ではできない勉強が あります。それは,自分自身がかかえる問題,これを知りたいとか, こういう人間になりたいとかいった問題を解決するために,「手当たり次第」に知識を漁る という勉強の方法です。つまり, 何か知りたいことがあったら,それを知っていそうな人を探して意見を聴くとか,出ていそうな本を 片っ端から読んでいくということです。こういったことは,頭で覚えてもできることではなく, 自由テーマのレポートを書いたり卒業論文を書く中で,自分で体験して身に付けるしかないことです。 こういうことが自然にできている人もいますが,大半の人は,与えられたことを覚えるだけの 勉強しかしてこなかったのではないかと思います。もちろん,講義を聴いて受身に知識を 得るというのも重要なことです。大学の卒業証書というのは,我慢強く講義を聴いてノートを とるという努力ができる人間であることの証明として社会では評価されてきたわけです。でも, 今の時代には,それだけでは駄目です。自分なりのテーマをもち, 問題解決能力をもつ人間が求められているわけです。そして,目的が明らかな勉強は 楽しい。そういう積極的な勉強のために図書館も活用してほしいということです。 ■図書館の活用を: では,図書館の利用の仕方について,少し具体的にいくつか言います。まず,学生が一番図書館を 利用するのは,定期試験前などに図書館で勉強するということだと思います。これに関連して言えば, 1年のときは単位をきっちり取らなくてはならないのですが,2年になると講義の方は少し余裕も 出てくるし,公務員試験などの勉強などを始めなくてはならない。そのときに,特に下宿の人は生活が 不規則になりがちなので,図書館をぜひ活用して勉強してほしいということです。 ■本を買うか借りるか: 本を借りるという図書館本来の利用の仕方ですが,その前に,基本的には 自分が読む本は買うと いうのが本筋だと思います。講義のテキストなどは当然買わなければならないですが,その他にも 自分の関心あるもので重要な本は,線を引いたり,繰り返し読んだり参照したりするために買った 方が良い場合が多いと思います。ただ,これはあくまで私の意見であって,そうでない人,一貫して 本は借りて済ます人もいますから,参考程度に聴いて貰えればいいです。 ■図書館の主体的な利用: 次に,本を借りるということですが, 高価な専門書や,一部分しか読まない本や資料などは 図書館で借りることになります。ただ大学の図書館というのは,大学にいる教員の関心などによって, 蔵書の中身はかなり偏っています。それに,日本で発行される出版物の数は膨大なものであり, 例えば経済関係だけでも全部の本を図書館に入れることは不可能です。仙台の書店に並ぶ専門書に したって,出版されるもののほんの一部だけにすぎないわけです。そこで,皆さんにやって ほしいのは,広告や各書店の図書の目録などで見た自分の読みたい本は,購入希望申込の申請が できますので,そういう申請をして図書館に入れさせる ようにして下さい。それから,他大学の図書館にある本などを利用できる リファレンス・サービスを図書館ではやっているのでそういうものも 利用して下さい。図書館を使いこなすというのは単にいまある本を借りるということだけでは ないので,色々なサービスの利用方法も覚えて下さい。 ■入庫して本を見る: 最後にもう1つ言っておきたいのは, 3年になって土樋キャンパスに来ると,卒論の研究などの 便宜を図って,図書館の書庫に入って図書を見ることができるようになります。普通は,カードで 借りたい図書の番号を調べて,申込書に書いて窓口に渡して本をもってきてもらうのですが, 書庫に自分で入って,つまり入庫して本を借りてくることができるようになります。ただし, これは3年でゼミに入った人だけしか受けられない権利ですので,入庫するにはまずゼミに 入れるように,1・2年のうちに一生懸命勉強して下さい。 ■流されるな: 最初にも言いましたように, 具体的な説明は図書館の事務の人から聴いて下さい。最後にあまり言いたくはありませんが…… これから 皆さんはわかると思いますが,泉キャンパスは,1・2年生ばかりがいるせいもあると思いますが, 勉強する雰囲気,大学らしい雰囲気に欠けています(少なくとも私はそう思います)。 そういう中で,自分の目的をしっかりもって,それに向かって努力するというのは 難しいかもしれません。でもそれでは大学に来たことが無駄に なるので,雰囲気に飲まれたり,周りに流されないようにして下さい。 そのためにも図書館を活用して下さい。 |