回帰分析では、従属変数に対する、独立変数の影響の有無を個別に判断することはできるが、「独立変数のうち最も影響があるものはどれか?」に関する答えは得られない。製品の属性を独立変数として、製品の魅力、価値、満足などを従属変数とし回帰分析を行うことを想定すると、製品属性のうち、魅力・価値・満足へ影響を与えるものを見つけることは可能となる。実際の製品を作る段になり、最も有望な属性は何か?、どの属性を高めれば最も製品の魅力を上げられるか?などは重要な意思決定となる。可能性のあるすべての属性を製品に盛り込むことにより製品が多機能なものとなるが必ず高付加価値なものとなるとは限らない。また盛り込むことのできる属性の上限があった場合、盛り込む属性の取捨選択を行わなくてはならなくなる。これに対する回答は回帰分析からは得ることができない。
この回帰分析の欠点に対する解決策として有望な分析手法がコンジョイント分析を紹介します。コンジョイント分析では、製品属性に対応する言葉として要因という用語を使います。 コンジョイント分析では、要因ごとの効用値をもとめ、数値としてそれぞれの要因の水準を表すことができます。これにより最も重視されている要因を明らかにすることが可能となります。また、各水準が数値化されることにより、好まれている要因、好まれていない要因を把握することが可能となり、各水準を組み合わせ、組み合わせごとの効用値の合計を求めることが可能となります。
コンジョイント分析では、最初に要因を決めなくてはなりません。要因はいくつかの水準をもつもので、製品属性と読み替えると理解しやすくなると思います。たとえば、携帯電話を例にすると、通信速度や画面の大きさなどが要因として挙げられます。要因は機能の有無でも作り出すことが可能であり、タッチパネル機能の有無を要因とすることができます。「水準」という言葉が使われていますが、上位下位の順序がある必要はなく、ストレート、2つ折り、スライドなどを設定することが可能です。
要因と水準の設定において注意すべき点があります。水準は同じベクトル上にある必要があり、複数の要因にまたがることはできません。 水準は適切な距離を持つように設定されなくてはならず、極端に距離のあるものを入れることは好ましくありません。 水準の表現としての表現が適切かどうかも重要です。それぞれの製品は、要因1から1つだけ水準を選び、要因2からも1つだけ水準を選びます。すべての組み合わせにおいて実現可能なものとなっている必要があります。製品としてあり得ない組み合わせができないようにしなくてはなりません。
要因の数と水準の数はそのすべての組み合わせを想定するため、それぞれの数が多くなると回答者に対して大きな負担を課すことになります。コンジョイント分析ではコンジョイントカードと呼ばれる水準の組み合わせ例に順序を付ける調査になるため、要因や水準の数が多くなると下位の順序をつけることが難しくなります。そのため、要因の数は4〜6程度、水準の数2〜5程度が好ましいとされています。
サンプルのシンタックスでは、要因を4つ、水準を各3つとしています。要因の名前は、YOUIN1 YOUIN2 YOUIN3 YOUIN4 としています。水準の名前は '水準ij'
orthoplan factors= YOUIN1 '日本語で要因1のラベルを記述' ('水準11' '水準12' '水準13') YOUIN2 '日本語で要因2のラベルを記述' ('水準21' '水準22' '水準23') YOUIN3 '日本語で要因3のラベルを記述' ('水準31' '水準32' '水準33') YOUIN4 '日本語で要因4のラベルを記述' ('水準41' '水準42' '水準43') / holdout=3. */----------------------------------------------------------------------------------------------/* */ カードに使用する変数の表示とファイルの指定 /* */----------------------------------------------------------------------------------------------/* */ 直行配列表をもとに作成されたカードの結果を表示し保存するファイルの指定を行う。 /* */ ここで指定されたファイルは効用値を推定するために使用される。 /* */ 大学ではSドライブにworkというフォルダーをあらかじめ作成しておく。 /* */----------------------------------------------------------------------------------------------/* list variables=all. save outfile='s:\work\sample01.sav'.
コンジョイント分析は被験者にコンジョイントカードを見せ、それに順位を付けてもらうといった形式の調査を行います。調査票は一覧表形式でカードを表示し、そこに順位を記録するタイプと、それぞれのカードを1枚ずつカードに記入し、カードの順番を記録する方法があります。
rank | Sequence | ||
---|---|---|---|
カード | 順位 | 順番 | カード |
1 | 1番目 | ||
2 | 2番目 | ||
3 | 3番目 | ||
4 | 4番目 | ||
5 | 5番目 | ||
6 | 6番目 | ||
7 | 7番目 |
*/----------------------------------------------------------------------------------------------/* */ 効用値を推定するためのシンタックス /* */----------------------------------------------------------------------------------------------/* */ コンジョイント分析用のシンタックス /* */ 要因を4つとして例示 /* */ ●で表したものはカードの枚数を入力 /* */ データファイル内の順位を付けた変数名と一致させる /* */----------------------------------------------------------------------------------------------/* conjoint plan = 's:\work\sample01.sav' / factors = YOUIN1 YOUIN2 YOUIN3 YOUIN4 (discrete) / data = 's:\work\data01.sav' / rank = r1 to r● / subject = id / print = all / plot = all / utility = 's:\work\utility01.sav' .