その他(教育・研究)
第03回 後編(2004.08.23)
【 アンデス高地の環境利用の特質に関する調査 2004年度 後編 】
2004年07月15-08月06日 ペルー共和国

【図7:07月22日 マルカパタ】
失敗Day。 山本先生と中澤さんがアウサンガテ山(Ausangate、6372m)の 周囲を巡るトレッキング調査に向かうので、 我々が登山基地ティンキ(Tuinqi)まで送ることになった。 怪鳥が翼を広げたようなアウサンガテ北壁をカメラに収めようとしたその瞬間、私は青ざめた。 昨夜、データの吸い上げに使ったデジカメのメモリーを宿に置いてきたのだ。 予備もない。ということで、この日は写真を1枚も撮れなかった。 写真は、帰路に撮影したアウサンガテ山群。マルカパタ泊。

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【図8:23日 マルカパタ】
今日はマルカパタ村のなかでも高標高地域(4000 m前後)を 中心に地形・土壌調査を行うことにした。 氷食谷底には泥炭層や腐植土壌がみられるのだが、 それらがいつから集積・生成したのかを明らかにすることは山の環境変遷を考えるうえで重要だ。 佐々木さんは14C年代測定の専門家でもあるので、土壌調査は彼にイニシアチブをとってもらって進めた。 写真は、完新世(最近1.1万年以内)に形成されたと推定されるモレーンを覆う腐植土壌の掘削調査のようす。 マルカパタ泊。

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【 図9:24日 マルカパタ>キンセミル】
24/25両日は低標高側(3000-1000 m)を調査することにした。 プエブロからアラス川(Rio Araz)を下ること半日。 キンセミル(Quince Mil)という、50年ほど前までは砂金とりで賑わったという田舎町をめざした。 下るにつれ植生は常緑樹主体になり、樹高も増ましてくる。 こうした景観をセルバ(Cerba)という。 空気の湿り気や匂いも違ってくる。 ところが、楽しみにしていた旅はこの日不調に終わった。 体調がどうも優れないのだ。 疲れているうえ、悪路を揺られたためか胃腸が悲鳴を上げ、下痢が酷い。 微熱も出てきた。コーラやスープだけ飲んで、1泊200円のホテル(写真)の軋むベッドに横たわった。 キンセミル泊。

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【 図10:25日 キンセミル>マルカパタ】
昨夜からの雨が朝方まで続いていた。 乾季といえども、この街はアマゾンの入口にあるから年間を通じて雨が多いらしい。 湿気を避けるために家の多くは高床式だ。 屋根もトタン葺きだし、山では当たり前の日干しれんが(アドベ)も見られない。 キンセミルは、アラス川が平原に出るところに作った数段の河成段丘面上に立地している。 写真は、最高位面から町を俯瞰したもの。遠くからサルサの調べとスープの香りが流れてくる。 今日は日曜日で、みんな家でのんびり朝飯をとっているのだろう。 ああ、なんて雰囲気のよいところだろう。マルカパタ泊。

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【 図11:26日 マルカパタ】
独立記念日(7月28日)が近いので、ここ数日はプエブロも実質的な休みに入っている。 広場には子供鼓笛隊なども繰り出して賑やかだ。 実は、この頃から村人の間で私たち調査隊に対する変な噂がひろまっていたのだ。 曰く「砂金獲りにきている」「ダイアモンド探しだ」。 下手に動いて噂を助長しない方がよいとの山本先生の判断で、午前中はおとなしく見物をし、 午後から(こっそり)調査に出た。海外の農村での調査のむずかしさを知る。 写真は、土石流で埋もれた過去の段丘面上の土壌層(プエブロの近く)。マルカパタ泊。

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【 図12:27日 マルカパタ】
キク(Quico)という、幹線道路からは隔絶された集落に向かうことにしていた。 プエブロから3-4時間のところだ。しかし当地は冬である。 途中の峠道の通過が困難なため(霜柱が融解して土壌が過飽和状態=ぬかるみ)、やむなく引き返した。 帰り道で埋没土壌や氷河地形の調査を行い、夕方早くにプエブロに帰還した。 情勢を総合的に判断して、明日28日に山を下りることにした。 最後の晩餐、それに荷造りもあるからだ。写真は、峠のランチタイム。 中景の岩は大きな羊背岩。マルカパタ泊。

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【図13:28日 マルカパタ>クスコ】

われわれが今日下山すると聞いて、村人がジャガイモの種芋を見せてくれた(写真)。 山本先生はジャガイモ研究の第一人者なのだ。 アンデスはジャガイモの原産地で、100種を超えるジャガイモが今なお生産されている。 写真はその一部である。袋ごとに品種が違うらしいが、混ぜたら私にはとうてい区別できないだろう。 ともあれ、朝9時過ぎにはプエブロを発ち、 オコンガテで昼食をとり、クスコには夕方暗くなってから着いた。クスコ泊。

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【図14:29日 クスコ】

予備日としていた29日がぽっかり空いたので、 クスコが初めてという佐々木さんと半日市内見学に出た。 サクサイワマン遺跡 ではあまりに天気がよいので芝生の上で昼寝をし、 近くのケンコー遺跡までウマに揺られたりもして過ごした。 写真はサクサイワマンの石垣にもたれる筆者(佐々木さん撮影)。クスコ泊。

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【図15:30日 クスコ>リマ】

早朝便でクスコからリマに移動。ヌエボ・コンチネンテ航空(元アエロ・コンチネンテ)を使ったが、 ボーイング727というオンボロ機材が珍しかった。 日中はペンション佐藤とアマノ博物館で荷造りやデータ整理などして過ごし、 夜は鳥居さんと佐々木さんと私の3人でお別れ夕食会をした。 写真は、佐々木さんが立ち寄ったリマ(ミラ・フローレス地区)の楽器屋。リマ泊。

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【図16:31日 リマ>ヒューストン】

ミラ・フローレスのショッピングモール(ラルコ・マール)に繰り出した。 ここはリマの富裕層や観光客を相手にした宝石・毛皮店や料理屋のほか、 ゲームセンターやファーストフード店も出ている。 海食崖を切り崩して作られているので太平洋の眺めがよい。 昼飯に佐々木さんとハンバーガー(安くて味もよかった)を食したが、 肉が生焼けだったのか午後になって腹を軽く下した。リマ泊

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【図17:2日 ヒューストン>成田】

いつものように、リマを深夜に出て、ヒューストンに早朝着。 数時間後には成田行コンチネンタル007便に乗る。 佐々木さんに窓側席を譲ってもらい、トイレも我慢して空撮に専念した。 移り変わる地形や植生、土地利用、雲の様子・・・。 地理学的空の旅 はやっぱり面白い。 写真は、合衆国テキサス/ニューメキシコ州境付近の大規模農地。

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