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森の日記―――書を捨てて森に入ろう
平成22年7月29日
近所に、中央に池があり、周囲をうっそうとした樹木が取り囲んでいる広場があります。そこはいつもかんかん照りなので、樹の下の影を伝ってぐるっと回りながら通り過ぎるだけでした。今日は雨だったから、池のそばまで行けて、その周囲のツツジなど小さな樹の葉っぱの一つひとつを見たりして、遠くから見るのと違うなと思いました。
ところが、ふと傘をもちあげて、周囲の樹木の集まりを見た瞬間、びっくりしたことがありました。こんもりとした緑の連なりと思っていた隙間すきまに、たくさんの樹の幹が見え隠れしていたのですが、その色が全部違うというのに気がついた。赤っぽかったり、緑っぽかったり、灰色っぽかったり・・・樹の種類の問題ではなくて、太い幹やくねくねしている幹やいろいろありますが、形よりも、色の違いです。ひとの顔や自分の道具や好きな食べ物は細かく識別しますが、光景のなかにあるそれぞれ一つひとつの樹とその無数の葉っぱと、自分の利害関心のないものでも、逆にぼくに無関心なものであれ、十把ひとからげで種類を区別していればいいのではなく、種類と無関係に、みんなそれぞれに違っているんだということ・・・「それぞれに生きているんだ」という表現など、ありふれすぎていて、それではうまく説明になりません。

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