黄斑円孔手術体験記


森の日記―――書を捨てて森に入ろう


平成22年8月1日

 ぼくの散歩している場所は、森のようなひと気のないところと、いわゆる公園と、二つあります。公園には、ひとから見られることの意識が出てしまうし、森には、見ることを試されるようなところがある。ぼくはまず、60年間放置されているという森を通って何かを感じ、公園に着いて、ベンチに座って、20分くらい、森で発見したことなど、いろんな考え事をします。

 今日の話は、虫たちです。いつも何箇所か蚊にさされます。長袖シャツを着てみたり、虫除けスプレーをかけてみたり(これはあまり好きではない)、工夫していますが、刺されないときはないです。「かゆくならないなら5-6滴の血くらいあげてもいいけどね」と考えたのですが、よく考えるとかゆくなるのは蚊のせいではなく、人間の体がそうしているんですね。病原菌を運ぶことがあるから、かゆくなって蚊をたたきつぶすように進化してしまったのでしょう。

 今日、白くて小さな蝶が数匹、低いところをはたはたしているのに気づきました。昨日もおとついもいただろうに。いつもはたはたしている気分はどんなものだろう、人間はアゲハなど大きい蝶ばかりをひいきするのですが、この小さな蝶の方がよほど動きやすいのではないでしょうか、蝶の立場からすると、アゲハなど、ばったばったした不恰好な連中なのかもしれない、と思いました。他方、蝶から見ると、蚊はほとんど戦闘機ですね。とはいえ、こんなひと気のない森で、ぼくが通らなかったら飢え死にしてしまいそうだ(ウォーキングのひとたちは早足で通り抜けるので刺されない)。


         

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