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森の日記―――書を捨てて森に入ろう
平成22年8月11日
今日は森のある公園が休みで扉が閉鎖されていたので、違う道(普段は帰ってくる道)を通って公園に行ってきた。小川と森のそばの道ですが、逆向きに見ると新しい森です。途中で「かみつく樹」を見つけました。電信柱はない方がいいと思 うのですが、その樹もおなじ気持らしい、電線にかみついていた。
公園に着いていつものベンチに座っていた。正面に大きな樹が見えますが、これまでは、あまり「友だち感」がしなかった。人工的な庭園では、樹はなぜか丸く刈り込まれていたりするが、その樹もまた、巨大な樹のくせに、みずから丸くなっているからだったかもしれない。ところが、その丸い頭のてっぺん付近に、ぴんぴんと飛びだしているところがあって、笑ってしまった。「寝ぐせの樹」と呼ぶことにしたら、友だちに見えてきた。前からその樹が好きだったから、ぼくはそのベンチに座っていたんだな。
ぼくとすれ違っていく出勤者たちは、何であんな険しい顔をして、すたすたと歩いているんだろう。これからはじまる厳しい仕事のことを想っているのだろうか。公園からの帰り途で、家を建てている工務店のひとたちがいた。ひとりの男が建物を見上げながら、たばこをのんびり吸っていた。「あのひとも樹木のようだ」と、ふと思った。人間も、みんなが樹木のように見えればいい。そうすると、ぼくはだれも嫌いになることはないだろう。ひとを嫌うことほど、人生でつらく苦しいことはないからね。
森のなかには、お互いがお互いに、きれいなものも、汚いものもない。たとえ、そこに迷い込んできた人間の、その体から出てくる多様な液体や気体だって、ある生物たちにはご馳走です。

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