黄斑円孔手術体験記


森の日記―――書を捨てて森に入ろう


平成22年8月16日

 今日の朝は、ゼミ合宿で山中湖畔にいました。湖のほとりを歩いていて、幾何学的な線を自然のなかに見つけました。それは水と土との境界線のことだ。水はさざなみで、揺れているので境界線はくねくねはしているが、遠くから見ると直線状になっている。液体と固体の境界面? その違いは温度によるのだから、温度という分子の運動の激しさの程度が、物質の世界に線を作りだすのか。物質も、精神と同様に幾何学が好きなのか。とはいえ、土が黒っぽいのは、無数の生物たちがそのなかにいて、またその累々たる死体のせいだそうだ。

 湖とは道路の反対側にある森にも入ってみましたが、いつもの森とは違ってよそよそしい感じがします。無数の樹があるすごい森だとは思いましたが、もしかするとキャンピングカーがところどころに止まっていて、どこか不自然にきりひらかれているからかもしれない。

 1本の樹は、最近出来上がりつつある東京のスカイトゥリー(空樹)よりも巨大だ。見上げてみてほしい。その大きさに驚かされずにはいないだろう。鉄骨の一本一本を、樹の細胞ひとつひとつとしてみれば、樹というものは何と巨大で、しかも、それは自分自身で組みあげていった結果なのだ。


         

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