黄斑円孔手術体験記


森の日記―――書を捨てて森に入ろう


平成22年8月31日

 いつも思うのですが、階段はたとえ木材を埋めてある程度のものでも、下ばかり見なければならなくなるので、つまらないものです。だらだら坂の方が、くねくね遠回りでも好きです。でも、ときに階段の上にきれいなものも見つかるからいいか。

 樹々を見上げて思うのは、これはどうやっても見たまま写真には撮れそうにないということです。コローという画家がいますが、その森の絵を見て驚いたことがありました。緑のなかに、いたずら書きのように黒い線が、何のためらいもなくピュンピュンと引いてあって、それがまさしく樹の枝なのです。画家は、写真よりも本物の視野を見せてくれます。

 水辺の植物が気になってしょうがないのですが、今日気づいたのは、土のうえに生えているのの1.5倍は大きいということ、土のうえに生えているよりは1.5倍は密生しているということ、この辺に秘密があるのかな。万物のアルケーは水だといったタレスもこれを見ていたのかもしれません。

 森に入ろうとすると蜘蛛の巣が二重に張ってあって、一瞬、棒か何かで落として入ろうかとも思いましたが、足もとに棒がみつかりませんでした。よかったね。逆の入口から入りました。

 緑の葉っぱのあいだに枯葉がちらほらついています。光をかざしてそれを見ると、それは黄金色に光り輝いています。とてもきれいでした。


         

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