黄斑円孔手術体験記


森の日記―――書を捨てて森に入ろう


平成22年9月1日

 よくもまあ方々に蜘蛛の巣があるものです。簡単に見つかるようになりました。光にきらきらと反射するパースペクティヴを探すと、不思議なレース模様で美しいとすらいえます。ぼくが蜘蛛の巣にこだわるのは、精神分析的意味があるといわれてもしかたないのですが(説明はしません)、昆虫の気分でもあるのです。

 飛ぶことのできる昆虫たちは、さぞかし蜘蛛の巣が恐ろしいだろうと、一旦は思ったのですが、それは間違いです。蜘蛛の巣にひっかかった昆虫は、多分みな死ぬのですから、その怖さを経験して、用心する昆虫はいないのです。進化論的にいえば、たまたま蜘蛛の巣にひっかかりにくい昆虫の子孫たちがいま生きているというわけです。蜘蛛も結構大変な辛抱なんでしょうね。生物種の大多数は昆虫だそうです。生命の主役は、動物ではなく昆虫や植物なのです。

 もし人間の道路を塞ぐような巨大蜘蛛がいて、哺乳類も狙ったらどうしよう、と思いましたが、いたとしても人間によって絶滅させられていたでしょうし、人間も空を飛べませんから、ありそうもないことでした。

 「もしもわたしが空を飛べたら」という歌がありましたが、多分、人間を狙う巨大な蜘蛛ばかりでなく、強力な猛禽類が出現したり、ジュラ紀の翼竜プテラノドンが生きのびていたりしたことでしょうから、人間は絶滅していたかもしれません。夢を壊すようなことをいってすみませんでした。


         

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