黄斑円孔手術体験記


森の日記―――書を捨てて森に入ろう


平成22年9月15日

 雨が降ったらしく、落葉が濡れていて柔らかい踏み心地です。葉っぱが濡れていて、少し重そうです。地面を見ると、苔が青々と元気です。砂地には、雨の作った精妙な模様がついています。箒で掃く跡の、何千倍かの精度だね。

 足もとばかり見ていたら、ついに蜘蛛の巣にひっかかった。頭にふわっとネットみたいなものがかぶせられ、慌ててしゃがみこんで通り抜けた。ふりかえってみると、蜘蛛の巣は無事でした。蜘蛛にとっては大きすぎる獲物だよね。

 樹の幹はたいていいろんなシワによって覆われています。サルスベリのようなつるんとした樹の方が珍しい。樹のシワは荘厳なのに、人間のシワはなかなかそうはいかないと書いたのを思い出しますが、逆に、人間の身体はなぜサルスベリのようにつるつるなのでしょうか。猿が登ってくるわけでもないのにね。

 人間が獣(毛もの)であったころ、なぜか毛の薄い人間が子孫を作るのに有利だった。生存上の理由は思いつかないので、きっと性淘汰なのだろう。互いに毛の薄い相手と交わりたがった。でも、ケモノである器官には、ちゃんと毛が残っている。頭(脳)はどうだって? ひとを傷つけるのも、差別するのも、戦争をするのも、みなこの脳がやっているのだから、知性はケモノだね。では、眉毛もケモノかって?・・・それは分からない。


         

                                                  (c) FUNAKI Toru 2010-