黄斑円孔手術体験記


森の日記―――書を捨てて森に入ろう


平成22年9月17日

 雨が降っていたらしく、空気は透明で、樹々のコントラストがはっきりしています。明るい光が斜めから差し込んでいます。枝がみな黒く、つややかに見える。

 1mmくらいの小さな赤い花を並んでつけている名の知らぬ草を見つけました。しゃがみこまないと気づかない。でも、虫たちからすると「かわいい」花なのだろう。逆に、「自分が虫の大きさになったら」と想像してみました。とすると、自分より大きな極彩色の花ばかり、ちょっと怖いね。

 川辺の刈られた草のあとの土のうえに、ぽつりぽつりと雑草が生えてきました。いつのまにか、大きな葉っぱもつけています。雑草の「雑」とは何だろうね。「分類するのもいや」ということなのか。遠くの風景のように何もかも一緒くた?

 「雑音」というのもあります。小川のせせらぎや虫の声のように発生源がはっきりしたものほかに、「ボソッ」とか「プチッ」とか、得体の知れない音がしてきます。雑なるものも、結構いいよ。

 雑草、雑音、雑種。雑なるものは、人間の勝手だよね。最近のイヌはみな種類がはっきりしたイヌですが、以前は雑種がいっぱいいた。雑種といっても、種が混じっているのではなく、「純血種」の方が人為的に作りだされたものですから、みんなイヌなのですが(そしてもとはオオカミという種ですが)、どうして人間は「純粋」、「純潔」が好きなのだろう。思考するのに簡単だからかな。それは「思考しない」ということとどう違うんだろう。


         

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