黄斑円孔手術体験記


森の日記―――書を捨てて森に入ろう


平成22年9月25日

 台風の影響か、とても風が強かった。いつものように上の方で枝が揺れているという程度ではなく、森全体がどよめいている感じです。未開人の恐怖を想像します。根があって動けないから大丈夫なはずだけれど、「超巨大な熊のようにして飛び掛ってきたらどうしよう」といった。

 一本の樹でも、枝によって揺れている方向が違うとき、心理学でいう、地と図の反転図形のようにして、眼には見えない怪物が枝から枝へと飛び移っているというようにも見えます。映画の『プレデター』のようだ。あるいは、中国の古代人は、そこに「気」の働きという発想を抱いたのかな。

 シャツをひっかけて出かけましたが、それでも寒かった。他の動物たちは寒くなったからといって服を着たりしないけれど、それで大丈夫なのだろう。カモも鯉もいつものとおりだった。毛のないケモノである人間だけが、自分で意識して服をとっかえひっかえしなければならないなんて、不便だね。

 意識が強いと、からだが微妙な変化を起こしやすくなる。からだ自体がもつホメオスタシスのようなものは、意識が世話をしようとすればするほど、うまく働かなくなる。どんどん不自然になり、どんどんからだが弱くなる。だからといって、意識がからだのことを忘れると、からだはもっと大変なことになるかもしれない。


         

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