大きすぎて見えないものを「観る」。
人間と比べ、あまりにも大きく、あまりにも遠く離れている「宇宙の姿」を 人類はどのように捉え、どう理解してきたのかを知ること。 また、肉眼観測による限界を突破し、その向こうの 世界をどのように発見したきたのかを調べ、理解し、学ぶこと。
2. 天動説と地動説 3. 小テストと解説/まとめ 5.ハーシェルの観測 6. 小テストと解説/まとめ 8.光の性質(反射と屈折)と本質(波動か粒子か) 9. 小テストと解説/まとめ 11.ドップラー効果とハッブルの法則 12. 小テストと解説/まとめ 14.生命の誕生、系外惑星 15. 小テストと解説/まとめ |
レンズ(ガラスを磨いて作る)は光の屈折を利用して、(1)集光および(2)像の拡大を行う。 レンズを2枚組み合わせた「機械」のことを屈折望遠鏡という。 ガリレオが史上初の天体観測を行ったのも屈折望遠鏡である。 ガリレオが使用した屈折望遠鏡はガリレオ式といって、凸レンズと凹レンズを組み合わせて作る。
ガリレオ式屈折望遠鏡の概略(LISEプロジェクトのホームページより)
望遠鏡には、光の反射を利用した反射望遠鏡というタイプもある。
鏡を2枚とレンズを1枚組み合わせた望遠鏡である。レンズが抱える「収差」の問題を解決するために、
ニュートンが最初に考案した。
ニュートン式望遠鏡の概略( LISEプロジェクトのホームページより)
現代の天文学研究における観測では、もっぱら反射望遠鏡が利用されている。レンズに比べ、 鏡の方が大型化が比較的容易であるからだ。しかし、アマチュア天文家の多くは、屈折望遠鏡を 利用している人が多い。望遠鏡の持ち歩きの良さ、調整や管理の容易さ、などが理由である。光線の屈折を説明する図はネット検索するとたくさん見つかるが、その多くが誤りである。 もっとも重要なのは、接眼レンズの先(と眼玉の間)で光線が再び平行光線に戻ることである。 対物レンズの手前で大きく広がり、光線密度が低い状態だった光の束が、望遠鏡を経て、 対物レンズから外に飛び出して眼玉に入るまでに、集約し、密な平行光線に変化している点が 重要である。これが望遠鏡の重要機能の一つである「集光」であるからだ。
接眼レンズの先で光線が平行に戻ることをちゃんと説明してあるホームページは、 上記のLSE(フランスの国立天文台の一つ)の解説や、 Vixen(日本の望遠鏡メーカー)の製品に使用されているレンズの設計を担当した 加藤保美氏(故人)の解説など、 専門家によるものが多い(注:私が調べた限り)。ネットで勉強するときは気をつける必要がある。
注:LSEで利用されている挿絵は ”The history of the telescope" (H.C.King,Dover,1979; original publication, 1955) からの引用。
天体望遠鏡のレンズ設計を本職とされていた 加藤氏のホームページには、レンズ設計のため(あるいはその学習のため)のソフトウェア OPT98が公開されている。このソフトウェアを利用すると、様々なレンズや、レンズの組合せ で作る複雑な光学系についての光線追尾が可能となる。また、望遠鏡を自作するアマチュア天文家 の方々も多く存在し、彼らの情報も役に立つ (たとえばYAMACA氏のホームページ)。
望遠鏡の仕組みを理解する上で、「(遠方からの)平行光線は点光源」を意味することを知ることが
重要だ。「平行に走る光の線の一本一本は異なる光源に由来し、別の像に対応している」と考えて
しまいがちだが、実はどれも同じ像(点)からやってきた光線である。
したがって、やってくる平行光線をなるべく多く集める
ことができれば、平行光線に相当する点は明るく見える。仮に、数本欠けてしまうようなことが
あったとしても、(像が多少暗くなるだけで)像自体は見えるのである。
レンズの機能のひとつは、(図の上下に)広がってしまった光を、コンパクトに集めることにある。 暗くて見えなかったものでも、目の中にたくさんの光が入ると見えるようになるから、 眼球の大きさ程度の部分にできる限りたくさんの平行光線を詰め込むことが大切である。 これを「集光」という。
遠方に位置する2つの点光源が光線を放っているとする。当然、異なる点光源から出ている光線同士は 有限の角度をなして(交わって)いる。ところが、観測者に届く頃には、この2つの光線の角度は わからないほど小さくなってしまい、一種類の平行光線のように見えてしまう。
こうなると、観測者にはこの平行線が「一点」として見えてしまう。遠方に位置する2点を そのまま「2点」として見分けられる能力を分解能という。分解能が高い望遠鏡ほど、 遠くの天体の姿をそのままの姿として捉えることができる。肉眼で見ると「点」にしか見えない 星々も、実際には面白い形をしているのかもしれない(例:土星)。
望遠鏡には、この失われた2点間の角度の情報を、2枚のレンズによって増幅し回復する機能がある。 このため、1点に潰れてしまった像が2点(あるいはそれ以上の点)に復活することで 遠方の天体の像を観測することができるようになるのである。