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泡盛レポート003

マッコリの麹を学ぶ

日本の酒の醸造には、蒸した米に麹カビをつけて育てる「ばら麹」が使用されています。沖縄の泡盛の場合は、熱に強い黒麹カビをタイ産の酒米につけて二日ほど寝かせて、酒米全体に黒麹カビを繁殖させてから、水と合わせてモロミ(醪)を造りました。

泡盛の黒麹

米と黒麹を合わせて2日寝かせる

水を加えて貯蔵すると醪になる

韓国の場合は、一般に小麦を殻ごと石臼で挽いて、これに水を合わせてから、練って、円盤状に成型して作った「餅麹」を使用しています。

しかし、日本では「餅麹」にお目にかかることはありません。そこで、私たちは2014年3月中旬に韓国釜山市郊外の金井山城にある<金井山城土産酒有限会社>を訪ねて、伝統的な麹造りを勉強させていただくことにしました。この会社で醸造される金井山城マッコリは、韓国を代表する伝統酒で、300年の歴史があると伝えられ、1979年に韓国民俗酒第1号に指定された銘酒です。

金井山城

金井山城土産酒

小麦を挽く機械

マッコリは、かつては自家醸造され、農作業の合間などにも愛飲されてきた、まさに民俗酒ですが、標高800メートルに位置する金井山城では、米も麦も酒を醸造するに足るほどは出来ません。しかし豊かな地下水と穏やかな気候を利用して麹を作り、酒を醸造するには最適の環境でした。村の人たちの話によると、かつては釜山の町で米と小麦を仕入れ、マッコリを醸造し、時には釜山の町に売りに行くこともあったようです。各家庭には麹を造る小規模な麹室があったと言われます。

金井山城マッコリの麹造りは、「麹之郷」という看板のかかった小さな小屋で行われています。ここで七、八人のハルモニのチームが小麦の粉を踏んで麹を造り、麹室の管理をしているのです。小麦は殻ごと臼で挽いていましたが、いまは機械で挽きます。挽いた小麦に水を加えて三時間ほど練り上げます。これを小さなボールにとり分けて、四角い手拭のような布でくるんで、足で踏んで上手に円盤状に仕上げます。麹一枚踏むのに30秒ほど、瞬く間の熟練の技です。

布にくるんだ小麦を踏む

平たく踏み広げる

出来上がり

布を剥ぎ取る

麹室の棚に並べる

しっかりカビの付いた麹

これを、かつてはオンドルの効いた麹室の棚に一枚ずつ並べて一週間ほどおくと、麹室に住み着いた麹カビが付着して「餅麹」になりましたが、いまはガスを利用して温度をいます。さらにこれを縦に重ねて、さらに一週間ほど養生してから、袋に詰めて保管するのです。

つぎにマッコリの醸造過程をみてみましょう。まず米を水に入れて一時間ほど洗います。つぎに洗った米を蒸篭(セイロ)で蒸し上げたのちに、飯台に移してよく冷まします。同時に円盤状の「餅麹」を石臼などで砕いて、米と麹を合わせて、よくなじませます。

石臼で麹をくだく

麹と米をあわせる

発酵が始まる

醸造タンクに金井山城の地下水をはり、米と麹を加えて、24度から28度のほどよい温度に管理し、途中、丁寧に攪拌して、ガス抜きを行い、一週間ほど寝かせるとマッコリが出来上がります。

出来上がったマッコリを漉します。昔は馬の毛などで編んだザルで漉しましたが、いまは機械にまかせて、おもに酒にまざった籾殻をとりのぞき、さらに水を加えてアルコール度数を8度に調整します。昔は、これを甕に移して保存しましたが、いまはペットボトルにおさめて出来上がり。

マッコリは、醸造後も発酵を続けるので、冷蔵庫に保管しても10日ほどで飲みきらなければなりません。マッコリの発酵が進みすぎると酢になり、昔はこれを魚の和え物を作るのに使用しました。

マッコリの醸造は、麹1㎏に対して米4㎏が基本ということですから、小麦が造る「餅麹」の割合が高く、マッコリは米と麦との共同作業で出来上がると言えないこともないと思いました。

出来上がったマッコリは、その日のうちに<金井山城土産酒有限会社>の劉清吉社長の奥さんが経営する金井山城名物の山羊料理の店で味わうことが出来ます。まさに地産地消で、美味しいです。

山羊料理とマッコリ

2014年5月23日 更新

泡盛レポート002

泡盛を造ってみました

2013年10月31日、忠孝蔵で、泡盛の製造体験をしました。忠孝蔵は、沖縄県豊見城にある忠孝酒造資料館で、誰でも泡盛造りの研修ができます。

①泡盛の醸造には、黒麹という麹カビの力を借ります。醸造の過程で、黒麹以外のカビが混入するとたいへんです。だから醸造所に入るときは、体を清めて、忠孝蔵が用意したシャツに着替え、長靴をはいて、鉢巻をして頭を覆います。

②泡盛の原料となるのはタイ産のロングライスです。一般的な日本の米は、丸みをおびていますが、タイ米はインディカ種なので、細長くサラサラしています。このタイプの米が、黒麹菌には適しています。黒麹菌は、暑さにつよく、沖縄の気候に適した麹菌です。今日は、この米60キロを洗って、蒸して、麹菌を繁殖させます。

③洗った米を甑(こしき・蒸し器)に移します。かなり力を必要とする作業です。

④甑の米に良く蒸気が行き渡るように、大きなシャモジでかき回します。左は、この日、指導してくれた井上さんです。

⑤炊き上がった米を麹棚(こうじだな)に移して黒麹菌を米に混ぜて、麹カビを繁殖させます。

⑥この麹は、主として生の小麦を粉にして、水を加えて、練ってから型にはめて、平たくのばすして円盤状にしてから麹カビを繁殖させる韓国の麹とはタイプが違います。

⑦甑のなかで蒸されると、米のデンプン質は麹の働きで糖化されやすくなります。黒麹菌は蒸された米の一粒ひとつぶに菌糸をのばし、米全体を麹に変えていきます。

⑧日本の研究者は、韓国のように生の穀物を粉にして練り固めたうえで麹カビを繁殖させるタイプの麹を餅麹(もちこうじ)、日本のように蒸した米の一粒ひとつぶに麹カビを植えつけるタイプの麹を撒麹(ばらこうじ)と呼び、二つの麹を区別します。ちなみに中国の麹は餅麹が主流です。

⑨麹を米にしっかり混ぜ終わると、麹棚にネットをかけて二日ほど寝かせ、その間3回ほどかき混ぜて麹カビを均等に繁殖させます。この作業を手入れ(ていれ)と呼びます。

⑩麹カビが繁殖し、麹に育った麹米を水をはった甕にあけます。

⑪そして酵母菌を加えます。

⑫そのまま2週間ほど放置すると、麹菌の働きで米に含まれるデンプンが糖化され、その糖を今度は、酵母が「発酵」という作用で、17%~18%のアルコールに変身させ、熟成されたモロミ(醪)が出来上がります。

⑬このモロミを蒸留すると泡盛の出来上がりです。

⑭蒸留直後の泡盛は50度ほどもあります。これを44度程度に調整し、さらに酒の油分をろ過機で取り除いた上で貯蔵・熟成します。

⑮熟成された泡盛を43%~20%に調整し、アルコール分、瓶や甕に詰めて出荷します

2014年2月10日 更新

泡盛レポート001

泡盛の聖地・首里三箇を行く

沖縄のモノレール(ゆいレール)の首里駅をおりると鳥堀の交差点に出ます。この辺りがが泡盛の聖地・首里三箇で、今も咲元酒造、瑞泉酒造、識名酒造が操業しています。琉球王府時代の18世紀半ばから、泡盛の製造は厳しく管理され首里三箇(鳥堀、崎山、赤田)以外の地域では醸造することができませんでした。

この地域が、王府の醸造地に選ばれた理由の一つは、なんと言っても水が豊かに湧き出していたからだと考えられます。首里城は小高い丘の上にありますが、弁ヶ嶽、雨乞嶽、虎頭山などに囲まれた盆地になっていて、その水の豊かさは龍潭池をみればわかります。

2013年10月21日 更新